きっかけ

拙者は日本人なのに、割と日本のことを知らない。あまり旅行にも興味が無く、国内の地理にすら疎い。現在のことですらこの体たらくなのに、歴史となると猶更知らない。とはいえ、今更歴史の教科書を読む気にもなれない。だって、歴史って偉い人が何かした、みたいな話が多くて自分に関係ないように思うのだ(画像はここから引用)。

偉い人が何かをしている例:『御ぐしあげ (枕草子)』(松岡映丘, 1926)

そこで、自分の先祖について調べるところから始めることにした。拙者の先祖ならば絶対に一般人だし、その歴史は身近に感じられて良いに違いない。

方法を考える

インターネットで調べてみたところ、自分の直系親族の戸籍ならば150年くらい前まで遡って取得できるらしい。インターネットの情報だけだと不安なので、書籍も買った。『先祖を千年、遡る 名字・戸籍・墓・家紋でわかるあなたのルーツ』という本だ。

書籍も買った

これによると、戸籍、お寺の過去帳、(武士の場合のみ)分限帳、宗門人別帳、検地帳、郷土史などを使って先祖調査ができるらしく、場合によっては1000年遡れるケースもあるという(丸山学, 2012)。戸籍をとるだけなら拙者にもできるような気がしてきたぞ。

実際にやってみる

まず、拙者の本籍地の市役所に戸籍謄本を送っていただくように依頼する。送付するものは、だいたい市役所のWEBサイトに書いてある。費用は定額小為替という証券で支払う(画像はここから引用)。実際にこの作業は2021年頃から始めた。当時は金額の多寡に関わらず定額小為替1枚につき100円だったはずが、2022年の1月から200円に値上がりした。…高くない? 50円の定額小為替を買うのに200円払うとか切なすぎる。

50円分の定額小為替でも1枚200円

自分の戸籍謄本を入手したらそのコピーを添えて、親、祖父、曾祖父… と上の世代に遡って、戸籍謄本と除籍謄本を取得する。除籍謄本とは戸籍の中の人が結婚、分家、死亡などの理由で全員いなくなった戸籍のことである。先祖代々同じ土地に住み続けている一族ならば、1回の手続きで全ての戸籍が取得できるが、別の市区町村に引越しなどしている場合はその自治体の戸籍課に別途依頼しないといけない。

想像以上に面倒

拙者の場合、東京都、千葉県、愛媛県、山口県、長崎県の市から戸籍を取得した。山口県の複数の市に先祖がおり、何度も手紙を送る羽目になった。ええ。大変でしたとも。一方、長崎県の方はほぼ全ての先祖が長崎市にいたため、元々の返信用封筒では入りきらないほどの戸籍を送っていただいた。長崎からは19通、総額で14,250円かかった。しかも送料は別だ。東京都港区の戸籍は、残念なことに80年の保存期間が終わったために既に処分されてしまっていた。

長崎から19通の戸籍が届く(合計14,250円、送料別)

量がエグい

届いた戸籍をファイルにまとめると、これだけの量になった。厚さにして1.3cmくらい。

1.3cmくらいの厚さ

昔の戸籍は当然手書きなので、一人一人の情報をエクセルに入力してデータ化した。記載された親族は総勢で200名を超えた。量がエグい。腱鞘炎になるかと思った。

読めない字がある

手書きの文字には個人差があるが、それ以上に変体仮名が読めなくて困った。変体仮名とは、平たく言うと、我々が使っている平仮名とは異なる文字の仮名である。昔は変体仮名をよく使っていた。今でも蕎麦屋の看板で見るアレだ(画像はここから引用)。

蕎麦屋のアレ

読めなかった字の例として、以下の画像を見て欲しい。読めない。

読めない

そこで『くずし字解読辞典』で調べてみた。すると「畿」の字をくずした「き」が該当しそうだと思ったが(児玉幸多 編, 1993, p291)、自信が無い。皆さんはどう思われるだろうか。

どう思います?

文政七年(1824年)生まれが見つかる

リスト化した一覧には生年月日も記載することにした。戸籍で確認できる範囲で最年長は文政七年(1824年)生まれだった。2024年から丁度200年だ。この年に生まれた有名な人物は、第13代将軍徳川 家定や、大村益次郎、海外では作曲家のスメタナや「キルヒホッフの法則」で有名なキルヒホッフがいる。この人が何かしたわけではないが、なんか、凄いぞ。

第13代将軍とタメ

この戸籍では、隠居した親が子供の戸籍に入ったことでこのような記載となっている。そのため、この戸籍の戸主よりも上の世代の人が確認できるわけだ。そんなわけで、一部の戸籍では150年どころか200年遡れてしまった。

次回の作業

こうして分厚い資料ができあがった。正直、ちょっと辛かった。戸籍の中身を精査しつつ、今回作成した親戚リストに情報を集約していく。変体仮名等の文字は、勉強しつつ徐々に慣れていくしかないと思う。次からは郷土史を中心に調べていくことにする。本当は寺の過去帳が見たいのだが、実家の寺について良く知らないし、過去帳を見たところでどうせ読めない。まずは、郷土史だ。

参考文献

  • 児玉幸多 編 (1993) 『くずし字解読辞典 普及版』東京堂出版
  • 丸山学 (2012) 『先祖を千年、遡る 名字・戸籍・墓・家紋でわかるあなたのルーツ』幻冬舎新書

投稿者 stdy_nt

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